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世界のかすり
 かすりの歴史は実のところよく分かっていない。世界的に見ると、どこの国でいつからなどは、はっきりしたことは分からないが古代インドに発祥した説が有力とされている。インドのアジャンタ洞窟寺院、ワゴーラ川を取り巻く崖に仏教石窟が掘り始められたのは紀元前1世紀、それから 7世紀までに29の石窟が作られた。そのアジャンタ石窟に画かれた壁画に「かすり」を着た人物が描かれている。
 矢絣風のかすりを着ているのはアジャンタの王や王妃などで、これをこの地方では「カニアリ」と呼んだ。この壁画が歴史を特定する資料として 古代インド発祥説が有力。また、日本の法隆寺献納宝物には聖徳太子が着ていた織物類の中に「かすり」がある。太子間道(たいしかんとう)と呼ばれるこの「かすり」は日本最古、また年代を知ることができる実物としても世界最古の「かすり」。この「かすり」は日本で織られた物ではなくインド・ビルマなどの南方の国のかすり。
 仏教が伝来したのは飛鳥時代552年、聖徳太子の「かすり」と アジャンタ王や王妃の「カニアリ」インドは仏教発祥の地として知られているが仏教とかすり、聖徳太子とダブらせてみると、仏教伝来の副産物として日本に入ったのか?なんて想像すると、また「かすり」の奥深さを感じてしまう。
 かすりはアジア的な織物と思われている方が多いが、インドを起点に中国を経て日本へ入った以外にも様々なルートで世界中で織られている。ヨーロッパでは中央アジア・中近東を抜けてフランス・ドイツ・イタリア・スイスでも多く織られた。特にフランスではかすりはシネと呼ばれ16世紀から盛んに織られるようになり、ルイ15世・ナポレオンの時代に宮廷衣装などに多く用いられている。
久留米かすり